地に足のついた物理学

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物理関係の新書本は、私の大変好きなジャンルの本ですが、同じ様な本を何冊も読んでいると、同じ処で説明が終わる解説が多くてがっかりすることが有ります。

私は、元々、機械系の研究者だったので、何事もいじり倒さないと分かった気にはなれないところが有ります。 数学者なら、式を提示しただけで、「この式が全てを物語る。」とエレガントに説明を完結させることが出来ますが、その式を実用に供しようとする機械屋にとっては、「この式の意味するところは、この場合にはこう、この場合にはこう。」 と、実際の場合に即して泥臭く、細かく見ていく必要が有ります。

私は、現代の物理学は、数学者的な論理の展開に偏りすぎていると感じています。 エレガントでは有りますが、宙に浮いた抽象的な議論で終わってしまっており、素朴に疑問に感じられる点も手つかずでたくさん残っているように思うことが有ります。 これなら、私のように泥臭く、具体的な例を一つずつく見てゆく者にも存在意義が有るのではないかと思い、このサイトを立ち上げました。

私は、物理学を発展させるためには、具体例を先入観無しに研究することこそが重要だと思うのです。 したがって、私が知りたいのは、主流派の権威がどう言ったかではなく、なぜそうなのか、その話はどんな根拠で、どの程度の確信を持って述べられている話なのか、それで私はどの位納得できるのかという点です。 物理学に取り組むに当たって、私は、権威者の結論からスタートするのではなく、スクラッチで、確証の有る事実のみから始めて、「地に足をつけて」 自分で結論を導き出したいと思っています。

先生の言う事をそのまま覚えるのは、「素直な良い生徒」 ですが、私は物知りおじさんになりたい訳ではなく、定説のうそを発見したい、「好奇心に満ちた真理の探求者」 を目指しているので、天下り的な説明には失望します。 こんな説明を平気でする著者は、元々「素直な良い生徒」 だったんだろうな、と思ってしまいます。

一般相対性理論にしても、量子力学にしても、アインシュタイン以前の科学者からすると、とんでもないことを言っている訳です。 もしも若い科学者が、新書本に書かれているような内容をそのまま当時の科学者に説明しようものなら、真っ当な学会からは弾き出されるのが当然だと思うのです。 私が求めているのは、私がアインシュタイン以前の科学者であるとして、その私を納得させてくれる様な本です。 しかし、数式の数を2倍にすると売れ行きが1/10になると言われる新書本にそれを求めるのは無理なのでしょう。 新書本は、主流派の出した結論を知識として知っておくための歴史書だと理解しておくことにしました。

新書本の知識は、近道に見えて全く近道ではいようなので、やはり、横着をせず、教科書を地道に勉強することから始めることにしました。 しかし、多くの教科書にも不満な点が多々有ります。

最も不満な点は、やはり、新書本と同じく素朴に考えれば誰でも疑問に感じるだろうと思われる点について、多くの教科書に共通してぼかした説明をしてある部分が有ることです。 「私は知っているけれども説明は難しいので略します。」と言う雰囲気で書いてあったり、しばしば単に何のコメントも無く説明を省いたりしているのですが、その教科書の元となった原典に書いていなかったので、あえて踏み込んだ説明を避けたのではないか、と思われる節があります。 正確性を期した慎重な姿勢であることは理解出来ますが、フラストレーションが溜まります。 そこで、このサイトでは、私の感じた「素朴な疑問」 の記述にも力を入れようと思います。

私の最も気に入った教科書は、WEBで公開されている、「EMANの物理学」 です。 多くの場合、教科書の著者は、学会で確固たる地位を確立した方であるのが普通なので、踏み込んだ、有る意味危険な独自の解説や、これは自分も分からないことだ、といった説明は避ける傾向に有るように思われます。
ところが、EMANさんは、物理学会でのキャリアを持たないことが良かったのか、自分が分からないこと、誰も分からないこと、普通の教科書では説明がされていないがEMANさんが踏み込んで考察したことなどを正確に分類し、丁寧に説明して下さっています。

私も、物理学会でのキャリアを持たないことにかけては、EMANさんと同格なので、(自慢できることか?) 軽々しく突飛な説を主張しない慎重ささえ忘れなければ、既存の著者よりも踏み込んだ議論を展開する資格が有るのではないかと思っています。

地に足のついた物理学」への1件のフィードバック

  1. Cimarosa

    こんにちは
    私のHPのリンクを掲載いただいているようでありがとうございます。
    敬意を表して、私も”Sora’s physics”を私のHPのリンクページで紹介させていただきます。
    物理学喫茶室 Cimarosa

    返信

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